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心と体のあり方を、茂田正和さんにうかがいました / vol.01

『ねぎらいのスプーン』にて、端境期を健やかに乗りきるためのレシピを提案してくださっている、スキンケアライフスタイルブランドOSAJIディレクターの茂田正和さん。
季節の変わり目に揺らぎやすい心と体を調律するスープレシピは、「作ってみました!」というお声も多くいただいています。
茂田さんが生み出す、皮膚科学に基づいた真摯な肌への視点と、五感を満たす情緒的な物づくりや思想は、私たちDRESS HERSELFが大切にしている、心地よさの追求と深く共鳴しています。
そんな連載を通じたご縁から、今回は改めて茂田さんにお話をうかがう機会をいただきました。
OSAJIの原点となったお母様とのエピソードから、現代を生きる女性たちにも響く考え方まで。
日々を愛おしく、健やかに生きるためのヒントを、前後編にわたってお届けします。(聞き手:DRESS HERSELF PR深澤)

PROFILE
茂田正和(しげた まさかず)
株式会社OSAJI 代表取締役 / OSAJIブランドディレクター
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音楽業界での技術職を経て、2001年より化粧品開発者の道へ進み、皮膚科学研究者であった叔父に師事。2004年より曽祖父が創業したメッキ加工メーカー日東電化工業の化粧品事業として多数の化粧品を開発、健やかで美しい肌を育むには五感からのアプローチが重要と実感。
2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI(オサジ)』を創立しディレクターに就任。2021年にOSAJIの新店舗としてホームフレグランス調香専門店「kako-家香–」(東京・蔵前)、2022年にはOSAJI、kako、レストラン 『enso』による複合ショップ(鎌倉・小町通り)をプロデュース。
2023年、日東電化工業の技術を活かした器ブランド『HEGE』を手がける。
著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)。2024年2月9日『食べる美容』(主婦と生活社)出版。

食べても安全なはずの化粧品を、母が使えなくなった日

深澤:
茂田さんの連載『ねぎらいのスプーン』は、読者の皆さんから「美味しくて、身体に優しい」と大変反響をいただいています。私たちはアパレルとして「外側」から、茂田さんはインナーケアという「内側」から肌に寄り添うという面で、非常に親和性が高いと感じています。本日は、改めて茂田さんのこれまでの歩みについてお聞かせいただけますか?

茂田さん:
キャリアのスタートは音楽業界からでした。レコーディングエンジニアとして少し働いた後、2000年に地元の群馬・高崎で友人たちとアパレルショップやライブハウスを立ち上げたんです。僕らの世代は就職氷河期真っ只中で、必ずしも「就職=正解」ではなかった。だから起業した年が自分にとっての社会人一年目だと思っています。
ただ、経営の知識もなかったので1年ほどで閉店してしまって。さて次はどうしようと考えていた矢先、母が交通事故に遭いました。その精神的ストレスからか、ひどい湿疹ができてしまったんです。
母はもともと「食べても安全」という自然派化粧品の販売に携わっていた人でしたが、トラブルが起きた途端、それまで信じて使ってきた化粧品が一切使えなくなってしまったんです。皮膚科に行っても「一切合切、化粧品はやめなさい」と言われ、呆然としていました。
自然派を謳うものでも、ひとたび肌が弱ると使えなくなるという事実は、当時の僕にとって驚愕でした。本当の意味で肌に優しい、良い化粧品って何だろう?と猛烈に興味が湧いて。幸い、叔父が皮膚科学の研究者だったので、アドバイスを受けながら実家のキッチンで試作を始めました。勉強を進めるうちに、テレビCMや世間に出回る情報と、実際の皮膚科学に大きな乖離があることに気づき、どんどんのめり込んでいったんです。

深澤:
そこから本格的な開発の道が始まったのですね。

茂田さん:
叔父から「温泉に入ってアトピーが改善したという非医療的なケースを、科学的に研究してみるのはどうだ?」と勧められ、全国津々浦々の温泉地を巡ったりもしました。
そして母が納得して使えるものができるまで、結局2年かかりました。母は良いものを見つけると人に勧めずにはいられない人なので、周囲に配り歩き始めて。それならちゃんと商品にしようと、2004年に最初のブランド『nesno(ネスノ)』を立ち上げました。
当時はお店への卸しがメインでしたが、時代の流れで僕たちのプロダクトを丁寧に伝えてくれる場所が少なくなっていった。それならば、科学的な根拠に基づいた誠実なプロダクトを、自分たちの店で、自分たちの口と手でしっかり伝えていこうと。そうして企画・開発・製造・販売を一気通貫で行う『OSAJI(オサジ)』が誕生しました。

江戸時代の医師「おさじ」が現代に必要だった理由

深澤:
今回の連載タイトルのスプーンは匙という意味でもありますが、OSAJIのブランド名にもかかっていて素敵だなと感じています。江戸時代、将軍や大名に仕える医師が、匙(さじ)を使って薬を調合する姿から『おさじ』と呼んだことが由来だそうですね。

茂田さん:
ブランド名を考える際、ある大きな出来事が頭にありました。数年前に起きた石鹸による健康被害です。石鹸に含まれる小麦由来成分が皮膚でアレルギー(接触性皮膚炎)を起こし、それが原因で今度は小麦を食べたらアナフィラキシーを起こすようになってしまった。皮膚で起きたアレルギーが、インナーの免疫まで変えてしまったんです。あれは化粧品業界・皮膚科学業界を震撼させました。人の免疫がこんなことになっていたんだと、人類が知る大きなきっかけになったんです。
また、紫外線が免疫を落とすというデータもありました。紫外線対策がしっかりしている保育園とそうじゃない保育園では、冬のインフルエンザの発症率に明らかな差が出たという疫学データもあったり。紫外線、大気汚染、過度な乾燥、化粧品の多様化……どうやら皮膚というのは単なる美容のパーツではなく、人の免疫やアレルギーをコントロールする重要な器官ではないか、と。
そんな背景から、単なる美容という枠を超え、スキンケアを通じて人のQOL(生活の質)を向上させることは、まさに現代における「民間医療」的な役割を担っている。そう確信したとき、OSAJIという名が自分の中でしっくりきたんです。

深澤:
大変興味深い由来です。
お母様から「敏感肌用のパッケージはなぜあんなにダサいの?」と言われたというエピソードも有名ですよね。

茂田さん:
母の切実な嘆きでしたね。母はインテリアやファッションが好きなので、洗面台に置きたくないデザインはそれ自体がストレスだったんです。敏感肌だからといって、心が高揚する体験まで奪われてはいけない。だからOSAJIでは、敏感肌用とわざわざ分けず、どんな肌質の人でも同じように文化的で美しい生活を送れる、ユニバーサルな物づくりを目指しています。

日本の物づくりが目指すべき「機能とデザイン」の両立

深澤:
私たちDRESS HERSELFも、肌が弱い方が安心して使えることを大前提にしながら、ファッション性を諦めないことを大切にしています。茂田さんから見て、私たちのブランドはどう映っていますか?

茂田さん:
僕は、DRESS HERSELFを、「究極の機能性ウェア」だと思っています。
最近はリカバリーウェアが流行っていますが、ただリカバリーすればいいわけじゃない。寝る時に着るものや肌に触れるものは、それ自体がライフスタイルの一部ですから。敏感肌用の化粧品でも同じことが言えますが、敏感肌専用という機能が満たされていればいいということでもない。日本のプロダクトには「機能を求めるとデザインを諦める」という二律背反の状態が多いと思いますが、そこをきちんと両立させているDRESS HERSELFは、非常に誠実な物づくりをしていると思います。日本人は本来、機能性なしでは満足できない開発魂を持っています。車だって安全で壊れないという機能の先に、デザインを融合させてきた。物に対しても、機能とデザインの両立が大切なんですよね。

深澤:
茂田さん、75歳になられたお母様にも、DRESS HERSELFをプレゼントしてくださっているんですよね。冬の乾燥に悩まれていたお母様が、今は「これなしでは生きられない」とローテーションしてくださっていると伺い、スタッフ一同とても嬉しく思っています。

深澤:
DRESS HERSELFは、ストレスフリーを念頭に置いて商品作りをしていますが、茂田さんはストレスが与える影響についてはどうお考えですか?

茂田さん:
誤解されがちですが、ストレスには「良質なストレス」と「悪質なストレス」があると思っています。
例えば今まで安価なスウェットをルームウェアにしていた人がシルクに切り替えるとき、値段や手入れの面で最初は少しストレスを感じるかもしれない。人はライフスタイルを変化させること自体がストレスなんです。でも、その変化によって未知の快適さを手に入れるのは良質なストレスです。いかに良質な選択をして心地よい世界を広げていくかが、人生の豊かさだと思うんです。DRESS HERSELFは、自分のライフスタイルや生活変容をしてみるという面では、「ちょうど良いストレス」だと思います。

深澤:
茂田さんご自身は、ご自分の健やかさを保つために実践されていることはあるんですか?

茂田さん:
僕自身は「ワクワクしなくなっていく」ことにストレスを感じるので、毎日をどうやったら非日常にできるかということを考えていますね。
脳科学的にいえばドーパミンを出すために、色々と工夫しています。最近緩慢としてるなと思ったら、何でもない日にホテルに泊まりに行ったりとか、ノープランで車で走ってみるとか、そういう中にちょっとした非日常感を見つけています。

深澤:
OSAJIも、パッケージや香りのアプローチで「違う私になりたい、なれるかも」と思わせるような商品を展開している印象があります。非日常感をどうやって取り入れるかという哲学が、茂田さんの根底にあるんですね。

茂田さん:
以前、伊藤まさこさんと「最近、洗いざらしで家にいるみたいな寝具をコンセプトにしてるホテルってあるじゃない?」と話したときに、まさこさんは「私は行きたくないな」と言っていたんです。なぜかと聞くと、「ホテルにいる特別感が味わえないじゃん」と。僕もその感覚はすごくわかるんです。そういうちょっとした寝具からもワクワクするドーパミンは出ると思うので、その感覚をすごく大事にしていますね。
特に寝具や衣類は、人がさわりに行ってる能動的な行動ではなく、布のほうから「さわりに来てる」わけですよね。肌触りの良い物に接していると、オキシトシンという幸せや愛情を感じるホルモンが出るんです。面白いことに自分の肌にクリームを塗る時、手のひらと肌の間にクリームの層ができるんですが、それで脳は「人に触れられている(いたわられている)」と錯覚し、ホルモンが分泌されるんです。

深澤:
セルフケアが、自分を愛でるプロセスになるのですね。

茂田さん:
シルクのような極上の肌触りに包まれることも同じです。頬に触れたり、体に触れたりすることで、オキシトシンという幸せホルモンが出て免疫機能も上がる。ほかにも表皮幹細胞や真皮幹細胞といったエイジングを司る細胞の働きが活性化したり、女性の更年期に影響するエストロゲンというホルモンの働きが良くなったりもする。幸せを感じる三大ホルモン(ドーパミン・オキシトシン・セロトニン)が作用することで、身体の内部から健やかさが作られる。DRESS HERSELFの服を着ることは、単なるおしゃれを超えて、科学的にも理にかなった機能があるのだと感じています。

深澤:
なるほど、皮膚科学の観点から見てシルクが優れている点はありますか?

茂田さん:
摩擦が少ないのは皮膚にとってすごく良いですよね。さらにシルクはアミノ酸の宝庫なので、寝汗をかいたときに、シルクから出されたアミノ酸が皮膚に再吸収されるのもスキンケア的にポジティブな効果があります。あと先ほど言ったように、やっぱり幸せホルモンが働くというのが、個人的には皮膚の機能改善効果が大きいと感じています。