旗を掲げない場所で、ただそこにいられる心地よさを
愛用者インタビュー vol.10
山本 佳代さま・上條 佳恵さま/美容室 dolls
https://yanaka-dolls.com
今回ご登場いただくのは、東京・谷中の商店街にある美容室「dolls(ドールズ)」を営む、山本さんと上條さんのお2人です。
専門学校を卒業後、青山の美容室に同期入社というご縁で出会い、2011年に共同経営という形でdollsをオープン。美容室という枠を超えて、映画部や手芸CLUBの運営や作家物の展示販売など、さまざまな活動がお店を中心に広がっています。
今回は、今年の3月にお店でDRESS HERSELFのPOP UP SHOPを開催していただいたご縁から、お話をうかがう機会をいただきました。下町情緒あふれる谷中の商店街で、年齢も趣味もバラバラなお客様が自然と集まるその理由を、たっぷりお聞きしました。(聞き手:DRESS HERSELF 宗村)
谷中の商店街の中にあるお店は、外観から可愛らしい雰囲気(左:上條さん、右:山本さん)
DH宗村:
まずはお2人の経歴と、一緒にお店を始めたきっかけを教えてください。
上條さん:
2人とも青山の美容室に同期入社したんです。「いつかお店を出したいね」という話になった時に、気も合うし趣味も結構近かったので、じゃあ一緒にやろうって、共同経営という形で始めることにしました。
DH宗村:
この谷中という場所を選んだのにはどんな理由があったんですか?
山本佳代さん
山本さん:
最初は表参道周辺や世田谷、目黒あたりも探したんですが、なかなか見つからず、そうこうしているうちに2011年、震災になってしまって。福島出身なので余計にショックが大きくて、一回考え直そうと思ったんです。いつ何が起きるかわからないから、今いるお客さんが通いやすい場所とか、そういうのは全部抜きにして、自分たちがやりたい場所でやった方がいいんじゃないかって。
山手線でいうと全然反対方向なので、お客さんがほぼ来られなくなる可能性が高かったんですけど……でも数年前に2人で谷中に来た時にすごく楽しかったんですよね。当時はもっと下町という感じで、近所の人がのんびり楽しんでいる雰囲気があって。「いつかおばあちゃんになったらここでやりたいね」って話していたんです。
上條さん:
でも、おばあちゃんになるまで待たなくてもいいんじゃないかと。そう思ったらちょうど物件が空いて、これはもう出会いだなという感じでした。前は雑貨屋さんだったんですが、扉のガラスなどはその時のまま活かしながら、少しリニューアルしています。
お二人のセンスが光るインテリア
DH宗村:
この通りは外国人観光客の方がすごく多いんですよね。でも扉を閉めると静かで、お店の雰囲気とお2人の空気感がとても落ち着きます。
美容室という枠を超えて、開かれた場所でありたい
DH宗村:
お店では陶芸やアクセサリーなど作家ものの展示販売、映画部や手芸CLUBといった活動など、美容室の枠を超えたことがたくさん広がっている印象があります。お2人にとって、dollsはどのような場所でありたいと考えていますか?
上條佳恵さん
上條さん:
常に開かれた場所でありたいという思いがあります。敷居をなるべくなくしたいというのが最初からあったので、年齢層も関係なく、誰でも気軽に入ってきて、いろんな交流ができたらいいなと。私自身、実は美容室がすごく緊張するんです(笑)。だからこそ、苦手な人でも入りやすいお店ができたらって常々思っています。
DH宗村:
インスタグラムを拝見すると個性的なお客様も多い印象ですが、客層はどんな感じでしょうか。
上條さん:
すごく幅広いです。ジャンルも他のお店に比べると定まっていないんですよね。
お客様に作ってもらったアップサイクルエプロン
細部まで可愛らしい作り
山本さん:
インスタから来てくださる方は好みが近い感じなんですが、商店街のお店なので地域のお客様もいらっしゃるんです。近所に住んでるおばあちゃんのカットをしながら、わざわざ遠くから来てくれた方が隣の席にいる、というシチュエーションも多くて。それが、すごく楽しいんですよね。
この街を初めて見た時に、力が抜けていて自然体に働いている地元の方が多くて、すごくいいなって感じたんです。頑張っている感じじゃないのに気持ちがいいというか。
上條さん:
最初に働いていたサロンでは「お店はステージです」と逆のことを教わってきたので。今は、手を抜いているとかではなくて、気持ち的にリラックスしている感じです。
山本さん:
私たちが元気じゃなかったら、やっぱりいい仕事ができないと思うので。正直にワガママに生きているというか。やりたくないことはやらない、のが一番ストレスフリーだと思います。その代わり、やりたいと思ったらやっちゃおう!という心持ちですね。
美容師と冷え。足元から考える、体のこと
DH宗村:
美容師という職業柄、特に冷えや疲れを感じる瞬間はどんな時ですか?
美容室では珍しい、お二人の興味が反映された選書
上條さん:
常に立ちっぱなしの仕事なので、足がものすごく冷えやすいと思います。お客様はクロスをかけるから暑いけど、私たちは夏は冷房で寒いし、冬は暖房が届かない地面にずっと足がついているから冷える。コンクリートの上に床材を貼っているだけなので、どうしても冷えてしまうんですよね。
山本さん:
私、実際に子宮の手術をしたことがあるんですが、あれは冷えのせいなんじゃないかなと思っていて。2人とも毎年しもやけができていましたし……。
DH宗村:
DRESS HERSELFのレギンスをご愛用くださっているとうかがって、少しでもお役に立てていると嬉しいです。出会う前はどんな対策をされていましたか?

上條さん:
それまでは靴下の重ね履きですね。私は最大4枚まで履いていました。でも洗濯も大変だし、靴も履けるサイズが限られてしまうし。これ、いつまで続けるんだろうと思っていて。
中に着るインナーをあたたかい素材にすると冷え方が全然違うというのはわかっていたんです。シルクとかウールとかカシミヤとか、素材がいいものは高いけど丁寧に扱うと長持ちするし着心地もいい。いろいろ試していたんですが、そんな時に表参道のセレクトショップで店員さんが「これが推しです!」とDRESS HERSELFのリブタンクトップを教えてくれたんです。天然素材なのに「あれ、意外と手が届く価格かも?」と思って。しかもパッケージも素敵。私、体格的にインナー選びが難しいんですが、すごく伸びるのにフィット感もある。その着心地に感動して、ウールレギンスも買ってみたら「これはすごい!」となって、山本さんにもプレゼントしました。
山本さん:
ウールのレギンス、本当にあったかくてすごく良かったんです。最初は「こんな厚手のレギンス、どうやってお手入れするんだろう」と思っていたんですが、ウールセーターと同じで毎回洗わなくていいと知ってからは、さらに気持ちが楽になって。今では冬に欠かせない存在です。
DH宗村:
それはとても嬉しいです。お客様にも冷えのお悩みは多いですか?
山本さん:
はい、多いです。意外と冬でもインナーを履いていない方も結構いらっしゃるんですよ。冷えは感じているのに締め付けが苦手、もごもごするのが嫌、という理由で。インナーを履かない人がいるんだ、というのが新発見でした。履いている方の悩みでよく聞くのは、レギンスと靴下の間が寒いとか、お尻のあたりがさがってしまうとか。そういう悩みを共有して話せるのも発見でしたね。
リブタンクトップ
裏側シルクのハイソックス
上條さん:
個人的なベストはウールレギンスがナンバーワンで、次がリブタンクトップとハイソックスです。今年の冬は、外から見るとかなり薄着だったと思うんですが(笑)、全然寒くなかった。インナーが変わるだけで、こんなに違うんだなと実感しています。
DH宗村:
お二人はとてもオシャレで素敵なんですが、DRESS HERSELFはアパレルアイテムよりもインナーをご愛用くださっているんですよね。でもブランドとしてはそれで全然良いと思っていて。インナーをシルクにして、その上は好きなテイストの服を着る、という楽しみ方を体現してくださっているなと感じました。
底冷えする床なので、厚めのスニーカーはマスト
上條さん:
アパレルアイテムは少し大人っぽいかな、という印象で。だから私はインナーとして着て、上は自分の好きな服を着ています。今日も足元はハイソックス履いてます(笑)。ホームページを読んだ時にもこだわって作られているんだなということが伝わってきました。
山本さん:
私もこの下はリブタンクです(笑)。
本当に救世主だよね、って話しています。お風呂に入る時にいつも足裏がすごく冷えているのを確認していたんですが、この冬はウールレギンスを履いたらそれがなかったんです。家に帰ってもずっと脱ぎたくないんですよね(笑)。
DH宗村:
DRESS HERSELFを使い始めて、生活に変化はありましたか?
山本さん:
リブタンクトップを着て寝るようにしたら、朝起きた時の感覚が変わりました。「ちゃんと寝た!」と思えます。それまで気づいてなかったけれど自分が思っていた以上に身体が冷えていたんだなと。それから美容師の仕事ってシャンプーやドライヤーで腕をよく動かすのでセーターみたいな厚手の服や袖がもたつくのが苦手で。でも胴体だけでも温めると全然違うと気がついて、営業中もリブタンクトップ着ています。
DH宗村:
ウチのスタッフも、体調が悪くなりそうになると「全身シルクにする!」と言っていて。とにかくこれ以上悪くしない、お守り代わりみたいな感じで身につけているみたいです。
上條さん:
シルクって扱いが難しいイメージがあったんですが、全然普通に洗濯できるんですね。
晴れた日は自転車でお店に来ることも
DH宗村:
乾燥機と直射日光さえ避けていただければ、ずっと使っていただけますよ。
山本さん:
みなさん、それぞれのライフスタイルがあるので押しつけがましく伝えたくはないんですが、1つのアイデアとして「シルクいいよ」と伝えていきたいなと思います。身体や肌のことでちょっとストレスを感じているなら、シルクがいいんじゃない?という感じで。自分に必要な時に「これがあったんだ」という発見になればいいなと思います。
体を温めること、自分を大切にすること
DH宗村:
体のために日頃から心がけていることはありますか?
上條さん:
自分で鍛えるのが苦手なので月に何回か教わりながらトレーニングを続けています。そうしたら体温も上がりましたし、仕事中もすごく楽になって。疲れにくくなりましたし、自分の身体の使い方にも意識が向くようになりました。
食事は甘いものがすごく好きなんですが、コンビニのお菓子などは食べなくなりました。あと、お米をあまり食べないんですが、パンより米の方がいいと言われているので、美味しい米粉パンを探すのが最近の楽しみです。
山本さん:
私は運動が正直あまり好きじゃなくて(笑)。なので最近、職場まで徒歩30分の場所に引っ越したんです。意識せずに体を動かせる環境を作ることが、運動嫌いの人間には一番いいのかな、と思います。
DRESS HERSELFに期待すること
DH宗村:
今後、DRESS HERSELFに期待することはありますか?
3月のPOP UPでは多くのお客様に知っていただけた
山本さん:
サイズ展開がもっと広がったら嬉しいですね。60代くらいのお客様が「暑いんだけど体が冷えるのよ」とおっしゃることが多くて、まさにDRESS HERSELFが必要そうだなと思うのですが、サイズでご案内しにくいことがあって。
DH宗村:
実はレギンスは、大きく作ってから生地を寝かせて安定させる製法なので、かなり伸びるんです。普通のタイツは小さく作ったものを伸ばすので締め付けますが、DRESS HERSELFのレギンスはその逆で、だからこそ締め付けない。かなり幅広いサイズに対応できると思います。でも他のアイテムでもサイズ展開は考えていますので、ぜひ検討させてください!
旗を掲げない場所であること
DH宗村:
最後に、今後のdollsについて、お2人の思いを聞かせてください。
インテリアもDIYしている
終始笑顔の上條さん、山本さん
上條さん:
以前は休まず働きたいタイプだったんですが、「しっかり休んでいい」という気持ちになってきました。仕事中は絶対座らないタイプで、それは変わらないんですけど(笑)、心の余裕が出てきた感じで、仕事以外のところにも目を向けていこうと思います。
山本さん:
最近ちょっと真剣に考えていることがあって。時代的にも、社会的にも、分断を感じる場面が増えてきているじゃないですか。このお店には、趣味の近い方も、近所だから来てくださる方も、本当にいろんな方が来てくれるんです。それって実はすごくいいことだなと思っていて。公園や図書館みたいな公共の場所みたいな感覚で、旗を掲げない場所でいたいんですよね。どんな考えの人も来られて、なんとなく気楽にいられる。カットをしながらそういう場を提供できたら嬉しいと思っています。
谷中銀座商店街のお手伝いにも参加させていただいているんですが、お祭りや街の活動を通していろんな世代の方と関わるようになって。2011年にお店を出した時に「若い人が来た!」「おばあちゃんの街に新風が吹いた」と言っていただいて、一緒にやろうと声をかけていただいたんです。いろんな人と関われることで、こんなにいろんな人がいるんだなと気づけるチャンスがあって、すごく勉強になっています。

上條さん:
最初は、「自分だったらこういうお店がいいな」という感覚を軸に店づくりをしていました。でも最近は、自分がAを選ぶなら、同じ数だけBを選ぶ人もいるんだなと思うようになって。「そういう人もいるよね」と自然に受け止められるようになった感じです。旗を掲げている人も、持っていない人も来られる場所。違う意見の人がいても、それが普通の空間であること。美容室ってこれまでそういう話はNGとされてきた部分もありましたが、そんな場所をこれからも続けていけたらいいなと思っています。
DH宗村:
お二人なら、そんな場所を作れるイメージがありますし、このお店もとても居心地が良いので、現に今もそうなんじゃないかと感じました。今日はお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。
〜インタビューを終えて〜
今回はdollsさんに伺ってのインタビューでしたが、一歩足を踏み入れた瞬間からお店全体が本当に心地よくて良い空気に満ちていました。迎えてくれたお2人は、非常に柔らかく可愛らしい佇まい。こちらの緊張を解きほぐし、何でも打ち明けたくなってしまうような深い懐の広さがあり、気づけば「ずっとこの場所にいたい」と思いました。
終始穏やかな笑顔の奥には確かな芯があり、山本さん、上條さんの独自の審美眼や考え方が、多くのお客さんから深く支持されている理由を肌で感じることができました。
インタビューの中で出てきた「旗を掲げない場所になりたい」という言葉が、すごくしっくりと胸に落ちています。趣味も年齢も違う人たちが、ごく自然に同じ空間にいられる、それがどれほど今の時代に貴重で、豊かなことか。お2人なら、きっとそんな場所をこれからも形にしていけるはずですし、これからもずっと谷中のオアシスでいてほしいと願っています。お2人が丁寧に育ててきたこの愛おしい空気を、ぜひ一度体感しに行ってみてください。




